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# インタビュー

木のはなし vol.2「吉野杉の魅力を知る」

# インタビュー

前回のインタビューで、杉の無垢材にすっかり魅了されてしまった私たち。MUQUへの杉材フローリングの導入を真剣に検討すると同時に、もっと杉のことが知りたくなって、ブランド杉の産地として知られる奈良県・吉野まで行ってみよう! ということに。

奈良県のほぼ中央に位置する吉野町。一般には桜の名所として有名ですが、日本で初めて杉や桧の植林がおこなわれた国造林発祥の地でもあります。町の面積の約80%を覆う山林のなかでも、吉野杉は古くから日本三大人工美林のひとつに数えられ、その吉野杉や吉野桧を使う木材木製品製造業が基幹産業として町の雇用を支えています。

今回取材にご協力いただいたのは、吉野杉・吉野桧を原木から製材し、木造建築用材などにして販売する吉野中央木材株式会社。吉野林業の林業地のふもと、吉野川沿いの中洲にある工場を訪ねると、専務取締役の石橋輝一さんが出迎えてくれました。

なぜ「吉野」はブランドになったのか

石橋さんは、2019年で創業80周年を迎える吉野中央木材株式会社の3代目。1939年に設立された同社は、この土地で木材製造業を営むもっとも古い会社のひとつだといいます。一方、吉野の人工植林の歴史はそれよりも遥かに古く、いまから500年ほど前の室町時代に豊臣秀吉が大阪城や伏見城の築城に吉野の木を使ったのが始まりとされているのだとか。

「秀吉の時代よりも昔、吉野が自然林だった頃からこのあたりには良質の木が多く、かつて奈良や京都にあった朝廷、神社仏閣の建立に吉野の木を使ったことがわかっています。理由は単純で、吉野地域が自然の条件に恵まれていたから。まず、いつも雨が降っていると言われるほど降水量が多い。そのわりに台風は来ないので倒木が少なく、積雪もほとんどない。木が育つのに適した気候に加え、土壌も栄養が極めて豊富なんです」

まっすぐで耐久性が高いうえ、節が少なく色艶が良い吉野の木は時の権力者たちに重宝され、秀吉の時代以降は自然林を切ったあとに植林がおこなわれるようになります。石橋さんによると、吉野の林業がさらに発展するきっかけになったのは「お酒」でした。江戸時代になって酒の大量生産が始まると、伏見や灘などの酒処から酒を運搬するための酒樽に、吉野杉が使われるようになったのです。

「もともと林業ってそんなに儲かる仕事じゃなかったんです。それが、江戸時代に酒樽の素材として使われることで、大きな需要が生まれた。酒樽に吉野杉が重宝されたのにはいくつか理由があって、まずひとつは、吉野杉の木香が酒にほどよく良い香りをつけたこと。ほかの産地の杉では、香りが強すぎてだめやったらしいです。それから、木の年輪が詰まっていて、酒が漏れ出しにくかったこと。酒樽の厚さがだいたい15mmくらいだったらしいですから、そのなかにできるだけ多く年輪があったほうが酒がにじみ出にくいわけです」

木の年輪幅が狭く、節が少ない──この特徴は、前回の記事でもご紹介したとおり「密植」という吉野特有の植林方法によるものです。密植とはなにか、密植することでどんな木が育つのか、あらためて石橋さんに聞いてみました。

「一般的な林業では1haにだいたい2000~3000本の木を植えますが、吉野では1haに1万本もの木を植えます。密に植えると木の成長スピードが遅くなりますから、そのぶん年輪が詰まります。ふつう1年に1cmくらい成長するところ、密植すると1年に2mmくらいしか成長しないんですね。さらに、密植して日光が当たりにくくなった杉は自ら枝を落とすので、節の少ない木に成長します」

そのほか、密集して植えることで幹の上部と下部で太さがあまり変わらないまっすぐな木が育つ、強度が強くなるなど、さまざまなメリットのある密植ですが、そのぶん時間がかかり、かつては100年をひとつのサイクルにしていたといいます。その間、つねに木の手入れも怠れない気の遠くなるような大仕事なのに、なぜ吉野はそれでも密植を選択したのでしょうか。

「もとの自然林の木がすばらしかったからでしょうね。要するに、自然林ってあちこちから自由に発芽してきて、密植と同じ条件で木が育つんですよ。実際、自然林の木って年輪がぎゅっと詰まってるんです。それを再現しようと先人たちが試行錯誤した結果、いまの林業のかたちが確立された、と。この先の100年後にいかに継承していくかは、僕らの世代の課題やと思ってます」

吉野という土地が育んだ原始の杉を、未来に伝えたい。私たちがいま手に取れる吉野杉の杉材は、500年ものあいだ連綿と受け継がれてきた先人たちからの贈り物だったのです。

石橋さんのお話を聞いたあとは、工場見学へ。いよいよ吉野の杉材とご対面です。

製材所と「吉野杉の家」を見学

工場の内外にところ狭しと積み上げられた木材。これらは、いったいどこからやって来るのでしょうか。吉野町には大きな原木市場が3箇所あり、それぞれの市場で月に1~2回ほど「市」が開かれます。「市」は、杉やヒノキなどを競りにかけて売る場所で、吉野中央木材もここで原木を手に入れているとのこと。市場から製材所に運ばれてきた原木は、まずは使われる種類別、用途別に分けられ、風通しのよい状態で敷地内に保管されます。

原木を選別し、皮をむいたら、次は原木から角材を切り出す「製材」をおこないます。このとき重要になるのが「木取り」の腕前。丸太をしっかり見て、木のどの部分からなにを取り出すかを決めてから、上下の大きな円盤に「帯ノコ」と呼ばれる帯状のノコギリが固定された機械を使い、製材していきます。帯ノコの切れ味を保つための調製を「目立て」というのですが、なんと吉野中央木材には「目立て」専門の職人さんがいるのだとか! 工房を拝見し、ぴかぴかに磨き上げられた帯ノコに思わず頭が下がったのでした。

木取り(一次製材)が終わったら、次の工程は「乾燥」。山に生えている木は、含水率150%と、水をたくさん含んでいます。原木から製材したばかりの木材もまだまだ多くの水分を含んでいるため、乾燥が進むにつれ変形や収縮が起こります。そこで、この段階でしっかりと乾燥させ、含水率を20%にまで下げておく必要があるのです。

材木を乾燥させるにあたり採用しているのは、「天然乾燥」と「人工乾燥」の2つの手法。「天然乾燥」はその名のとおり自然に乾燥させることで、材木のあいだに桟を挟んで風通しを良くし、陽の当たる場所に設置。平均して半年から1年かけて材木を乾かしていきます。一方の「人工乾燥」は乾燥機械を使って水分を抜く方法で、吉野中央木材では「低温除湿式」により、温度45度、湿度30%の状態で1~2週間かけて乾燥させます。

最後に見学させてもらったのは「仕上げ」の工程。一次製材した材木を、注文ごとの仕様や使い場所に合わせてさらに製材していきます(二次製材)。このとき目の間で披露していただいた仕上げ加工のすばらしかったこと! 一枚刃でかんなをかけた吉野杉には上質な艶が加わり、木材とは思えない美しさ。周囲からは感嘆の声が上がりました。

吉野杉に興味がある、吉野杉の美しさを実際に見てみたいという方は、いちど吉野へ足を運んでみるのがおすすめ。吉野中央木材では、一般の方からの工場見学も受け付けています(要予約)。その際は、吉野中央木材からほど近い「吉野杉の家」にぜひ宿泊を。

「吉野杉の家」とは、石橋さんも参加する吉野の魅力をPRする団体「Re:吉野と暮らす会」が、世界で活躍する若手建築家の長谷川豪さん、民泊のAirbnb、吉野町と協業してつくった宿泊施設。吉野杉をふんだんに使い、吉野の職人によって建てられたこの家で、木に触れ、木の香りに包まれ、吉野の500年の歩みに思いを馳せみてはいかがでしょうか。

■吉野中央木材株式会社
奈良県吉野郡吉野町橋屋57番地
TEL:0746-32-2181 
営業時間:8:00~17:15(見学時間は8:00~12:00、12:45~17:15)
休日:日曜、祝日、第2・4土曜、GW、夏季、年末年始
http://www.homarewood.co.jp/

■吉野杉の家
奈良県吉野郡吉野町飯貝624
定休日:月曜、火曜
問い合わせ:host@yoshinocedarhouse.com
https//yoshinocedarhouse.com

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